子供の頃、家の中には怖い場所があった。
家を出されるのはもちろん、
いたずらが過ぎて押入れに閉じ込められたり、
暗い場所にやられるのが怖かった。
どこの家にも必ず怖い場所・暗い場所があった。
大げさに言ってしまえば家は暗闇を持っていた。
ムスメは箱入りで筋金入りのオテンバムスメである。
ゆえに怒ることもシバシバ。
しかし家の中に暗闇は見当たらない。
日中、陽の差さない部屋なんてないし、押入れの中にだって薄日が差し込む。
昔は狭い押入れの中にも快感はあった。
フトンや茶箱のすき間に押し込められ、
壁の隅を凝視すると、ねずみの掘った穴らしき暗黒の世界がウッスラと見え始める。
コレは本当にイヤだったけど、
でも、時には泣き疲れて、そこでうたた寝をすることだって出来た。
押入れの中にも、夢を見る空間は残されていたのだ。
ワタクシが住んでいる家の押入れの中は、薄日が差し込むばかりか、
用心深くフスマを開けなければドーッと崩れ落ちてくるぐらいに、
押入れはモノでいっぱいだ。
ムスメが泣き寝入りするすき間すら、押入れには残っていない。
要らないモノを持ちすぎる不自由さの中にいると、
無一物の自由さがまぶしい。
ということで、オテンバムスメに
夢見ることが出来る空間を創ってやろう。