『東大寺の参道には、南大門を通り大仏殿へと向かう表のアプローチと、
若草山の方からお水取りで有名な二月堂を経て
大仏殿の裏手に続く裏のアプローチがある。
広々として開放的な表の道とは異なり、
この裏参堂には見え隠れする路地の魅力が溢れている。』
それが「路地を通る家」の始まりである。
道路から敷地へ足を踏み入れると
路地に導かれながら引き寄せられる。
その中にはいくつかのアプローチをつくり
そこに到るプロセスが異なれば印象は大きく変わる。
人は立ち止まり、いくつかのアプローチに戸惑い
向きを変えたりすることによって光、
風といった自然の動きなどを感じ、
立ち止まった刹那に様々な想いが交錯しながら
時間と空間を楽しむと同時に
出会いを控えた緊張感さえ漂ってくる。
そしてアプローチをズラすことにより方向を示唆し、
視線や方向性が操作され足元の段のリズムが
少しずつかえられることでゆっくりと歩みを取り、
徐々に建築や自然の表情、
人の想いが変化し展開してゆく。
所在地:高知県高知市
竣工:2010年8月
主要用途:専用住宅
構造:木造2階建て
敷地面積:166.46㎡
建築面積:96.14㎡
延床面積:144.72㎡
撮影:野村和慎