発表会を終えた娘はピアノから距離を置こうとする。
なんて思っていても、
それを放っておかないのがバカな親である。
岡山のシンフォニーホールに坂本龍一が来るというので
「ピアノの上手なおじさんが来るよ♪」
と、なかば強制的に娘を連れて行く。
でもきっとそのピアノの音色は
娘を心地よく夢の中へ誘うに違いない。
そう思ったワタクシ達の心配をよそに
どこで覚えたのか、大人たちを真似ているのか、
曲が終わるごとに割れんばかりの拍手をする。
しかも最後の曲まで、、、
何を感じているのか、とても愛おしく感じた。
ピアノと少し距離を置いていた娘は
再び深い仲になろうとしている最中だ。
深い仲になると、それはそれ、
人間の仲と同じようにドロドロンと
妙なものが生まれてくるのが自然というものだ。
楽しみである。
親バカである。
坂本龍一は夏目漱石が好きだったようだ。
実に丹念に読み、曲さえ作ろうとしていたふしもある。
彼が好きだった小説『草枕』に、
ひばりが空高く飛んでいくけれど、姿は見えず、
しかし、声だけが聞こえてくるシーンが出てくる、、、
遠くなりつつある五感を使って、
ワタクシの体の一部が目覚めた感がある。
建築も視覚に頼りすぎないようにしたいものである。